DOI: 10.1002/jja2.12831 ISSN: 1883-3772
早期に胸腔鏡下食道切除を行った腐食性食道炎による食道狭窄の1例(A case of the early thoracoscopic esophagectomy for esophageal stricture due to corrosive esophagitis)
鈴木 源, 勅使河原 勝伸, 山本 大輔, 坂本 早紀, 五木田 昌士, 田口 茂正, 清田 和也要旨
腐食性食道炎は時間の経過に伴って,食道と周囲組織の癒着が進行するため,手術を行う場合には操作が困難になると考えられる。我々は,早期に鏡視下切除を行った腐食性食道炎による食道狭窄の症例を経験したため報告する。症例は50歳の男性。自殺企図で濃度不明の硝酸25mLほど内服し,救急要請された。造影CTと上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy: EGD)で,腐食性食道炎・胃炎の診断となり,経過観察の方針で入院とした。EGDのフォローアップで胸部食道に狭窄を認めた。第33病日には胸部下部食道の内腔は5mm以下となった。狭窄は進行性であり第35,40病日にバルーン拡張術を実施するも効果は一時的であった。また,嚥下障害も合併した。第44病日に胸腔鏡下胸部食道切除,頚部食道唾液瘻造設,腹腔鏡下胃瘻造設術を行った。食道周囲の剥離の際に癒着や瘢痕形成は認めず,容易に剥離を行うことができた。嚥下障害が改善したため,2期的再建として,第84病日に大弯側胃管を用いた食道再建(胸骨後経路)を行い,第134病日に独歩退院とした。早期に手術を行うことで比較的難易度が低い状態で,低侵襲な胸腔鏡下食道切除術を安全に行うことが可能であった。